院長の活動報告

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兵庫県保険医協会健康情報テレフォンサービスへ寄稿

アトピー性皮膚炎の新しい治療法

アトピー性皮膚炎は、悪くなったり、良くなったりの状態を繰り返し、痒みを伴う皮膚の炎症です。この皮膚炎は、①表皮バリア機能の異常 ②免疫の異常 ③痒みの異常の3つの異常を基礎として、多くの免疫細胞やそこから出るサイトカインという蛋白質とが絡み合って、起こります。①の表皮バリア機能の異常により皮膚が乾燥し、②の免役以上を起こす外から様々の物質が入り込みます。例えば、ダニの死骸や糞、或いは家のほこりなどです。
その結果、皮膚炎が起こり、痒みの異常が起こり、その痒みを繰り返して、皮膚炎がますますひどくなります。この治療は、最近までステロイド軟膏と、非ステロイドのタクロリムス軟膏、およびシクロスポリンという飲み薬しかありませんでした。しかしここ数年、つけ薬、飲み薬や皮下注射の新しい薬が、世に出てきました。まずサイトカインによる刺激が細胞に入る時に必要な酵素を阻止して、炎症を防ぐつけ薬や飲み薬が新しく処方ができるようになりました。その他、最も新しく発売されたつけ薬として、サイトカインなどが増えるのを防ぐつけ薬も発売されました。タクロリムス以外の2種類の非ステロイド軟膏に関しては、塗った時の刺激がより少なくなっており、顔にはつけやすくなって、痒みに対する効果があります。飲み薬は2.3種類が発売されました。1日1回の飲み薬ですぐに効果が現われます。ただし、結核や肝炎ウイルスへの感染症がある人は、これらの症状が酷くなる可能性があるので、まず内科などに罹ってもらい、X―Pなどの検査を受けてもらう必要があります。これに対して、皮下注射の薬はそういう検査の必要は無く、自己注射も可能で、2週間もしくは4週間投与で、副作用も結膜炎以外は、少ないことが分かっています。また、飲み薬も注射薬も、つけ薬を続けることが必要です。ただ、この飲み薬も注射も1錠や1本が約12万円と非常に高く、このことが、患者さんにとっては迷うところなのですが、実際にこれらを処方された患者さんは、嘘のように痒みが止まって、人生が変わったと言われる方が多いです。これらの薬に関しては、いわゆる「高額医療費制度」が適応されますので、月に約5万円の支払いになります。是非、皮膚科専門医にご相談ください。この「高額医療費制度」に関しては、ご自分で各自治体や、勤務先にご相談ください。これからもアトピー性皮膚炎の治療薬はどんどん新しく開発されてきます。アトピー性皮膚炎の患者さんにとって、福音になる事が期待できると思います。

(西宮市 法貴 皮膚科)

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酒さ(赤ら顔)

本日は、酒さいわゆる「赤ら顔」についてお話します。酒さは20歳以上の女性に多く、鼻、頬、顎が紅くなります。これは、これらの部位の毛際血管が拡がることにより、多くの血液が流れるために起こります。皮膚の紅みと同時に火照りも起こってきます。またピリピリした痛みも感じられてきます。これが初期の症状で、次にニキビのような症状が現われます。ただニキビと異なるのは、ニキビでは毛孔に皮膚の脂肪が詰まってできる、コメドーと呼ばれる発疹が出るのに対して、酒さではコメドーは認められず、毛孔が紅くなって膿んでくることが特徴です。更に症状が進むと、鼻が盛り上がってきて鼻瘤(びりゆう)という状態、あの鉄腕アトムの漫画に登場する、「お茶の水博士」の鼻になってきますが、この鼻瘤は日本人には少ないと言われています。また、目の乾燥や充血が起こることもあります。酒さの原因は、遺伝的なものと環境的なことが考えられていますが、完全には分かっていません。ただ、辛い物等の刺激物、アルコールやカフェインを含む飲料水を多く飲む、寒暖差、長時間にわたって日光を浴びる、感情の高ぶり、喫煙などは、症状をひどくします。また酒さの症状は、アトピー性皮膚炎などで長期にわたって、ステロイド軟膏を塗っていて、その皮膚の副作用としての症状に非常に似ています。熟練した皮膚科医でないと、見極めが難しいところです。これは酒さ様皮膚炎と診断され、治療法が違ってきます。酒さの治療は、飲み薬としてはテトラサイクリン系の抗生物質やビタミン剤、塗り薬としてはかつては、タクロリムス軟膏やイオウを含んだローションが用いられましたが、最近、トリコモナスなどに効く、メトロニダゾールという飲み薬をゲル状にした軟膏が、有効であることが分かり、今までは自費診療で処方されていたものが、最近、欧米に先立ち、保険診療で処方できることになりました。多くの患者さんにとっては福音と言えそうです。酒さの症状は、酒さ様皮膚炎やニキビを初め、脂漏性皮膚炎、日光による皮膚炎、或いはエリテマトーデスのような、膠原病などとの鑑別が必要ですので、必ず専門医を受診されることをお勧めします。

(西宮市 法貴 憲)

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最近のニキビ治療

ニキビには様々な原因が、あります。ニキビが思春期に最も多くみられるのは、この時期に性ホルモンの分泌が盛んになり、皮脂つまり皮膚に分泌される脂肪の量が増えるからです。皮脂は必ず毛孔に分泌されるので、その皮脂により、毛孔が塞がれて、ニキビができます。そこにニキビ桿菌(かんきん)という細菌が感染して、炎症がおこり、ひどくなると膿が出てきます。これに入試などのストレス、偏った食事などによって、更にニキビを悪くします。また少し年齢が進むと、化粧特にリキッドタイプのファンデーションを使ったり、不規則な生理なども関係してきます。また朝食を抜いたり、夜遅い食事、間食なども影響があります。一昔前までは、「たかがニキビ」という考えが多かったのですが、今ではニキビ跡を気にする人も多く、まさにニキビ跡を残さない治療が求められています。

まずニキビ対策には、1日2回の洗顔が欠かせません。ニキビ用の固形石鹸を使って、かさつかないように洗顔することが大切です。一般的な治療は、付け薬と飲み薬です。塗り薬としてはビタミンAから造られた「アダパレン」や漂白剤である「過酸化ベンゾイル」をゲル状にした軟膏やその両方をミックスしたゲルあるいは、「過酸化ベンゾイル」と抗生物質をミックスしたゲル剤が使われています。また飲み薬としては、抗生物質やビタミンB群やC、Eを使うこともあります。漢方薬も効果があり、そのどれを使うかは、人それぞれによって、違ってきます。以上がニキビのガイドラインに沿った治療法で、保険診療ができます。この他、皮膚の一番上にある角質層を剥がす「ケミカルピーリング」や、特殊な機械を使ってビタミンCを皮膚に入れる治療法あるいは、特殊な光を当てる「クリアタッチ」という機械を使って炎症を抑える治療法などはそれなりの効果はあるものの、すべて自費診療となります。従って治療の基本は、保険診療であることを心がけて下さい。

ニキビかひどくなれば、膿んだ跡が盛り上がってきて、ケロイドや瘢痕になることもあり、ますます治りにくくなります。その場合は、その部位にステロイドを注射したり、漢方薬でしか治らない場合もあります。ニキビが軽症の場合は、洗顔と抗生物質の軟膏だけで治ることもありますので、ぜひ早めに医療機関を訪れることをお勧めします。

(西宮市 法貴 憲)

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乾癬

皮膚の一番外側にあるところを表皮と言い、その表皮の一番下にある基底細胞という細胞が19日ごとに分裂し、新しい細胞を作り出して、段々と上の方に移動して、最後には死に至っていわゆる垢となって皮膚から剥がれ落ちていきます。正常な人では、垢となって落ちるまでの期間は約45日ですが、乾癬の病気の人では、その期間が4日と、非常に短くなっています。乾癬の皮膚症状は大小様々な紅い発疹が全身に現れ、その発疹の上に短い期間で落ちていく垢が溜まっている発疹もみられます。この白い垢のようなものを、鱗屑といいますが、これを爪で掻くと出血します。乾癬の発疹は頭や肘、膝に特に多くみられます。また、爪の変形や関節症状を伴ってくることがあり、これらの合併症を伴う場合は治療が困難です。乾癬の原因はよく分かっていませんが、遺伝的なことがあり、またコレステロールなどが高い人に多く、風邪などの細菌や擦るなどの刺激によっても悪くなります。乾癬の治療はまず付け薬です。いわゆるステロイド軟膏は、直ぐに作用しますが、長い期間を使うと、皮膚が薄くなるなどの副作用もあり、これに代わって開発されたのが、ビタミンD3の軟膏です。この軟膏は使っているうちに、効き目が現れてきて、副作用も少なく、効果が持続します。最近では、ステロイドとビタミンD3の混ぜ合わさった軟膏もあり、選択肢が拡がっています。しかしそれでも発疹がひどくなってきた場合は、飲み薬や紫外線治療が有効です。飲み薬として、いわゆる免疫抑制剤やビタミンAなどがありますが、副作用も多く、血液検査や妊娠を避けなければならないというような、制限があります。紫外線治療は昔に比べて、皮膚癌が発生する確率の少ない機械がありますが、置いている医療機関がまだ少ない状況です。以上の治療でも効かなければ、最終手段として生物学的製剤という注射薬がありますが、この薬は非常に値段が高く、大きな病院でしか受けられません。今年になって、副作用も少なく、血液検査も必要のない、飲み薬が発売されましたが、これも値段が高いのが欠点です。この他、喫煙とお酒の飲みすぎ、お肉の食べ過ぎに注意し、魚や野菜中心の低カロリー食を心がけてください。乾癬の発疹は白い鱗屑が落ちてきて、服や床か汚れて、悩んでおられる方が多いと思います。皮膚科専門医を受診してご相談ください。

(西宮市 法貴 憲)

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《金土日》「子どものアトピー性皮膚炎と食事」

一時期、アトピー性皮膚炎の食事に関して、小児科と皮膚科の間で違う見解が示されたことがありましたが、最近はほぼ統一されてきました。それはアトピー性皮膚炎といえども決して特別な病気ではなく、食事に関しての基本は一般の病気と大筋では変わらないと考えられ、従って食事は、原則的には「バランス良く」の一言に尽きます。たとえ血液検査でアレルギーの値が高くなった食品でも、実際に食べて何の症状も起こらないこともあります。特に大豆、卵白、小麦などでアレルギーの値が高くなる子どもさんでも3歳を過ぎればアレルギーの値が低くなっていることが、よくあります。これは、3歳ごろまでは未発達であった腸の働きが3歳を過ぎて活発になり、消化が良くなってアレルギーを起こさなくなってくるからです。従って、アトピー性皮膚炎においても、バランスの良い食事を心がけた方が良いと考えてください。ただし、コーヒー、紅茶、スナック菓子、ジュースなどをついつい食べ過ぎになっていないかを注意してみましょう。

以上、申し上げました通り、アトピー性皮膚炎では食事に関して、ほとんどの子どもさんは特に制限を必要としません。しかし一方では特定の食品によって痒くなったり、皮膚炎が悪くなったりする子どもさんも、少数おられます。これらの子どもさんの治療は、以前とは違い、たとえ食物アレルギーがあっても、ごく少量ずつを食べさせる治療法があります。大きな病院の小児科を紹介してもらってください。またアトピー性皮膚炎の子供さんの皮膚は、乾燥がひどく、皮膚の最も上の角層が剥がれて、食べ物をはじめとして、皮膚に接触するあらゆる物が、何の抵抗も無く、皮膚の奥深くに入っていくことになって、アレルギーを起こしやすくなります。これを防ぐには、乳児期から保湿剤を塗ることが、必要です。保湿剤には、軟膏やクリームあるいは、ローションやスプレーなどのいろいろなタイプの物があり、子供さんの肌や季節によって、塗り分けができます。主治医にご相談ください。きちんと保湿をすることにより、アトピー性皮膚炎と同様に、鼻炎や喘息を防ぐことにもつながりますので、保湿は大変重要です。最後に、子供さんに出された保湿剤を、化粧品として使われているお母さん方がいらっしゃいますが、保湿剤はあくまでも医療用に開発されたものですので、化粧品として使用するのは、絶対に避けてください。

(西宮市 法貴 憲)

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(水疱性)類天疱瘡

類天疱瘡は、痒みを伴った皮膚の赤みと、その中に大きな水ぶくれができる病気です。高齢者に多く、体のあらゆるところに出てきます。原因は血液の中に含まれるたんぱく質の一種である免疫グロブリンが、自分の皮膚を攻撃することで起こります。本来、免疫グロブリンは、細菌やウィルスを、自分の体から守る働きなのですが、その一部が皮膚の一番上の層である表皮と、その下にある真皮の間に沈着して、表皮と.真皮を切り離すことによって、水ぶくれをつくり、同時に炎症を起こします。いわゆる自己免疫疾患の一つです。何もしないでおくと、どんどん拡がって、全身に赤みと水ぶくれが出来てきます。この水ぶくれは、パンパンに詰まっており、簡単には破れません。また、ほとんど唇や頬の中などの粘膜に症状が出ることはありません。類天疱瘡のもう一つの原因としては、血圧を下げる薬や尿の量を増やす薬の副作用で、起こる場合もあります。最近特に注目されているのは、DPP-4阻害薬という糖尿病の薬の副作用による類天疱瘡です。この薬による類天疱瘡は、水ぶくれの周りの赤みが目立たないと言われています。類天疱瘡の診断には、皮膚をとって検査する顕微鏡による診断と、蛍光抗体という特殊な色素と顕微鏡による検査、および血液検査が必要です。従って、大きな病院の受診が必要です。治療は、基本はステロイドの飲み薬と付け薬ですが、症状が軽い場合は、テトラサイクリンという抗生物質とビタミンの一種であるニコチン酸アミドの2種類の薬を飲んでもらいます。またDPP-4阻害薬などの副作用で、症状が出た類天疱瘡の場合は、まず飲み薬を止めない限りは、症状は治まりません。

類天疱瘡とよく似た病気に、これも自己免疫疾患である天疱瘡があります。この病気の水ぶくれは、簡単に破れて、火傷のようにただれた状態になり、唇や口の粘膜にも水ぶくれと、ただれを起こしてくる非常に治りにくい病気で、厚労省が指定する難病の一つです。この病気は、類天疱瘡とは違い、表皮を形作る細胞の間に、免疫グロブリンが沈着して、細胞の一つひとつを切り離して、水ぶくれを作っていきます。場合によっては死に至る病気です。

類天疱瘡では、死に至ることは殆どありませんが、高齢者に多いこともあり、時々内臓の悪性腫瘍が合併することもあります。いずれにしても、簡単に治る病気ではありません。

水ぶくれができたら、まず皮膚科専門医を受診してください。そのうえで大きな病院を紹介してもらってください。

(西宮市 法貴 憲)

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手足にぶつぶつが出来たら ――掌踵膿疱症――

手足にぶつぶつが出来る皮膚病には、湿疹や水虫がありますが、本日は掌踵膿疱症についてお話しします。掌踵膿疱症は、膿が溜まった膿疱と呼ばれる発疹が手のひら(手掌)や足の裏(足踵)に数多くみられる病気で、良くなったり、悪くなったりという経過を繰り返します。発疹は小さな水ぶくれがまず現れ、次第に膿疱になっていきます。その後はかさぶたになって、剥がれ落ちていき、これらの発疹が混じりあった状態になります。また、鎖骨や胸の中央、その他の関節が痛くなることがあります。この病気の発疹である膿疱には、細菌は含まれていません。従って他の部位にも、他人にも移ることはありません。原因として、扁桃腺炎や歯槽膿漏などの細菌による、慢性の炎症の病気が関係している場合があります。また、歯の治療の時に、歯に被せるパラジュウムなどの金属が引き金になることもあります。原因を確かめるには、細菌感染があるかどうか調べるための血液検査や、金属が関係しているかどうかを調べるために、パッチテストという検査が必要です。また、水虫との鑑別が必要なときもあり、これには顕微鏡による検査が必要です。いずれも皮膚科専門医で、検査を受けてください。治療は、もし扁桃腺炎などの細菌の感染があれば、抗生物質の飲み薬、歯の金属によるアレルギーがあれば、歯医者さんに相談をして、他の金属での治療をしてもらう必要があります。しかし、これでも治らない場合や新しい発疹が出てくる場合は、強めのステロイド軟膏やビタミンD3の軟膏を塗って治療します。紫外線やビタミンAの誘導体の飲み薬を使うこともあります。ただ、歯科金属の治療や、抗生物質の飲み薬でかなり良くなる人もいます。根気よく治療することが必要です。

(西宮市 法貴 憲)

兵庫県保険医協会健康情報テレフォンサービスへ寄稿

アトピー性皮膚炎の治療

アトピー性皮膚炎は、良くなったり悪くなったりの状態を繰り返す慢性の、痒みを伴う湿疹です。患者さんの多くは、いわゆるアトピー素因を持っています。アトピー素因というのは、①自分自身や家族に気管支喘息やアレルギー性鼻炎、結膜炎あるいはアトピー性皮膚炎がある、あるいは②血液検査で、IgEというアレルギーを示す抗体を持っている人です。人は、皮膚の一番上にある角層によって、様々な物質が入ってこないように守られています。その角層は水分や皮膚から出る脂肪などによって、瓦が敷き詰められたような構造をしています。アトピー性皮膚炎の人は皮膚が乾燥していることが多く、そのために角層に含まれる水分が失われて、瓦の構造に隙間ができ、いろいろな刺激が皮膚に入り込んで、アレルギー反応が起こってきます。いわゆるバリア機能が崩れた状態になっています。これを防ぐにはまずスキンケアが大切です。入浴、シャワーをしっかりとして、刺激の少ない石鹸で軽く洗ってください。それに加えて、使用感の良い保湿剤を選んで1日2回、たっぷり塗るようにしてください。このようにアトピー性皮膚炎は体の中からの原因と、外から入ってくる原因とがあり、根本的に治す治療はありません。先ずは保湿をきちんと施し、皮膚炎があれば、付け薬で治療します。基本的にはステロイド軟膏を、皮膚がしっとりする位の量を1日に2回塗ってください。紅い所や痒みがなくなるまで、塗ってください。良くなっても、すぐに止めるのではなく、例えば2日に1回とか、1週間に1~2回塗って、予防することが必要です。もちろん保湿剤を続けることも必要です。こういう塗り方は、ステロイド軟膏の副作用を防ぐためにも必要です。また特に顔に関しては、タクロリムスというステロイド以外の軟膏を使うこともあります。こういう薬を塗っても、どうしても治ってこない人には、ある一定の波長の紫外線をあてる方法や、シクロスポリンという免疫を抑える飲み薬があります。最近では筋肉への注射の薬も、保険で受けられるようになりました。ただアトピー性皮膚炎は、年齢とともに皮膚の症状が軽くなって行くことも分かっています。今はインターネットの普及により、様々な情報が飛び交っています。その情報に決して、惑わされないでください。皮膚の症状は人それぞれです。皮膚の状態によって、治療方法も変わってきます。まずは皮膚科専門医にご相談されることをお勧めします。

(西宮市 法貴 憲)

兵庫県保険医協会健康情報テレフォンサービスへ寄稿

白髪染めは体に大丈夫か

兵庫県医協会健康テレフォンサービスへ寄稿

紫外線と皮膚の老化

日本臨床皮膚科医会への寄稿

口唇ヘルペス

口唇ヘルペスは、単純ヘルペスウィルスが唇に感染して生じる病気です。単純ヘルペスウィルスは唇の他に、眼や鼻の周り、時には外陰部などにも感染しますが、今回は口唇ヘルペスについてお話します。このウィルスは、感染した他人の皮膚に直接、唇が接触することによってうつります。その症状は、数個の水疱(みずぶくれ)がブドウの房のように集まって、ピリピリといったような痛みを感じます。

原因はウィルスですので、最初は他人から感染し、このときは唇の症状も激しく、高い熱が出ることもありますが、2週間もすればウィルスに対してその力を弱める力、すなわち抗体ができて自然に治ります。ただこのウィルスは一度、人の皮膚に侵入してしまうと、神経の中に居座り続け、いったん作られた抗体の値が下がったときに、再び力を強めて、再発して水疱を作ります。このような再発がどの位の間隔で起こってくるのかは、人それぞれによって個人差があります。

ウィルスに対して、抗体の値を下げてしまう2つの大きな要素は、紫外線と疲れです。唇は常に紫外線が当たっており、夏の紫外線の強い季節や疲れがひどい時に、よく再発を起こします。風邪をひいた後などの体力が落ちた時に、口唇ヘルペスが出やすいのはそのためです。

多くの場合、ヘルペスの症状は唇だけに留まりますが、顔にアトピー性皮膚炎などの湿疹がある場合には、「カポジー水痘様発疹症」といって、ヘルペスウィルスが湿疹の症状がある皮膚に感染して、顔中に水疱が拡がってしまい、高い熱が出ることもあります。また口の中に拡がって、食事が摂れないこともあります。

再発を繰り返す人は、症状が出る前に痛みや痒みなどの違和感が出ることが多いので、おかしいと思ったら、すぐに皮膚科などを訪れることをお勧めします。何もしなくても2週間ぐらいで自然に治りますが、症状が重い人、湿疹病変のある人はもちろん、症状の軽い人でも薬を内服したり、外用することにより、症状をより軽くすることができ、また短い期間で治療することができます。

唇に水疱ができたり、ピリピリした痛みが出たときには、早めに皮膚科を受診して下さい。

(兵庫県支部 法貴 憲)